連作16首:To all that I hurt(嘘)

十代でギシアン歌う男にはどう足掻いてもなれなかったさ

自由にも熱くなってもいないけど思うようにも生きてないけど

盗難の保険手続きに行ったり割れたガラスの始末をしたり

僕達は何だかんだと言いながらサラリーマンになってしまった

追いかける価値があるならそれでいい塗りかえられた夢でもいいさ

傷ついて彷徨っていた猫だった今じゃ立派な野良猫として

愛すべき全てのものへ たどり着くまだ見ぬ場所へ 転がっていく

音楽が絶えて久しい毎日に流す汗だけ止まらなかった

今だってどこへ走っていくのかは結局わからないのだけれど

ちょっとだけ気の利いた歌見つけよう口ごもるよりまだマシな歌

街路樹の歌は捕まえられなくて僕は自分で短歌を詠う

原罪を抱きながらも汚れゆくそれでも生きる覚悟ならある

帰っても誰も待ってやしないけど俺たち今日も働きました

僕達が受け継いだこの国はまだ経済大国なんだろうか

傷跡もその軌跡さえ愛しくてひとつひとつを憶えていよう

月曜の朝は必ずやってきて追いかけてくる逃げ場所はない