連作百首:尊き愚者の航海(題詠blog2011投稿まとめ)

001:初 冥府へと誘う初潮 堕とされたnymphの歌に向かい往くふね
002:幸 旅人はEdenhallを後にする 幸運は自ら掴むもの
003:細 春を曳く木馬になってみませんか 制服貸与 委細面談
004:まさか 空だって飛んでみせると言ったけどまさかホントに飛べちゃうとはね
005:姿 君もまた直視できない姿だろう 自意識の肥満体と化して
006:困 ネクタイを緩め困知の目を凝らす 遥かなるLand of riches
007:耕 蒔かれない種は芽吹かないのが筋 深く耕す 薄膜越しに
008:下手 追憶の春一番に攫われた風を斬り裂くのが下手な人
009:寒 惚れたなら季節外れの寒さにも「しあわせだ」って天に嘯け
010:駆 恋人は駆けつけられず遠くから心配してる設定の夜
011:ゲーム 人生はかなりクソゲームリゲー と嘆くが何故か死なないキャラだ
012:堅 僕のことならもういいよ ひとときのひだまりだった堅木のデッキ
013:故 獣王の牙を性根に持つ故に俺は一人の蒲公英だった
014:残 何を願い何を叶えてきたのだろう 燃え尽きた花弁の残照
015:とりあえず この指輪…美紗もとりあえず間抜けだな 三十路の意識「紙のMoney!Money!」
016:絹 心根は表木綿の裏甲斐絹 煙草で出来た焼け焦げひとつ
017:失 ついてない?諦めたのはテメーだろ?いつか失くした1/2だ
018:準備 お別れの準備 いつかのマシュマロは干乾びていく僕たちのヒビ
019:層 咆哮は気層の底に光射すその方向へ つまりは空へ
020:幻 在り得ない背中に触れたはずの手に時折襲いくる幻肢痛
021:洗 「生きる ってそういうことさ」馴染んでく洗い晒しのワイシャツの白
022:でたらめ でたらめに繰り返すのも君の意思 つみきつねことりんごりらっぱん
023:蜂 祝日のハニートースト蜂さんに感謝もちろん君にも感謝
024:謝 うなされて謝罪しながら射精した どこか遠くでカルキのにおい
025:ミステリー 入れながら出す不可解なミステリー 蜂蜜色の目をしたけもの
026:震 ぜつぼうにかまける人のメガホンが沈んだ海に震える若布
027:水 風化する水槽に咲く赤い花 あんな顔して笑ったんだぜ?
028:説 空の青 説得力の十分なバックドロップ喰らった恋だ
029:公式 おめでとう あなたの愛が公式にAgapeと認められましたね
030:遅 遅すぎた手紙を書こう また色を変えていく6月の紫陽花
031:電 だとしても世界は回る 味噌汁に雪のよう降り注ぐ電磁波
032:町 通過する君の育った町並みは寝息を立てる工場地帯
033:奇跡 「危機」「奇跡」「凶器」「啄木鳥」「吸血鬼」「君が大好き」…君のため息
034:掃 死んだとさ 瓦礫の国の王様は人の悪意の掃射の中で
035:罪 空腹でいることすらも忘れてた贖罪を待つ餓狼の唸り
036:暑 灼けきった残渣としての海へ出る暑くあれども熱のない夏
037:ポーズ 部屋にいた 週末ずっと雨だった 「所詮はただのポーズでしょうよ」
038:抱 雨を抱く 涙を拭う指だけがあり 拭うべき涙はなくて
039:庭 じゃあまたね assたるegoと月の猫 今度こそひとりぼっちの庭
040:伝 "ひとつ"にはとどかないからせめて熱伝導率を改善しよう
041:さっぱり 愛なんてさっぱりわからなかった と 落ちきっていく砂を見ている
042:至 やみそうにない夕立が罰を詠む僕の乃至は僕たちの罪
043:寿 待つことに疲れ果てたと諦めて切れたリチウム電池の寿命
044:護 土砂降りに揺られる護送バスの中どんな夢なら描けたんだろう
045:幼稚 "魂"を! "生"を! 幼稚な詩想でも微妙な技巧でも滾れ! だろ?
046:奏 pulling off/hammering on/riff/mute もてる奏法すべてで愛を
047:態 気付かないフリでうかれて消費する僕らの愛は受動態気味
048:束 "踊"ろうぜ "統ベテ泯ボス月"の下 記憶の束は空に解ける
049:方法 この愛を進呈 応募方法は毒かナイフか視線でどうぞ
050:酒 こどもにはこどもビールを 僕らには子供みたいに笑うお酒を
051:漕 立ち漕ぎのペダル踏み込む脹脛 帰る場所なら過去にはあった
052:芯 僕達を夏の余熱で仕上げよう程よく芯のあるal dente
053:なう 温くなる炭酸の泡 大穴に丸ごと賭けて見事損なう
054:丼 開いたら蝉の抜け殻だったもの縁の欠けてる丼に撒く
055:虚 この弾が撃ち抜くべきは何?虚像?幻影?悪意? もしかして:俺
056:摘 蒲公英を一輪摘んだ帰り道 奪われた可能性について
057:ライバル ライバルと右手で握手しておいて利き腕の左ボディーブロー
058:帆 まだ恋を知らないままで寝転がる 海を知らない帆布のカバン
059:騒 供給の気がない君の蔵を撃つ恋騒動を謀る真夜中
060:直 平行な天井と垂直な君 あとちょっとだけ平衡のまま
061:有無 ただの欲?初回限定特典の有無で値段が変わるってこと
062:墓 コンビニで愛を買い損ねた男ここに眠る と刻む墓碑銘
063:丈 大丈夫 歩くよ 今はとりあえず今際の際にまた逢うために
064:おやつ もし君がおやつなんだと仮定して ど く い り き け ん た べ た ら し ん だ
065:羽 夜明けまえ片方ずつを毟り合い空に撒かれた羽根が降ります
066:豚 砂と泥どっちを選ぶ?狼の空腹と豚の幸福なら?
067:励 泣き顔は心の汗で汗臭い きちんとケアを励行のこと
068:コットン 不自然に騒いだ夜にコットンで拭き取っているナチュラルメイク
069:箸 終末の性感帯として竹と木の箸でくすぐられる背骨
070:介 本日のゲスト 血さんの紹介で涙さんですどうぞよろしく
071:謡 中心を少し外れてこの愛を詠う 唄って謡って謳う
072:汚 Always I'm 14 till I die. 汚れてるのは土なんですか?
073:自然 君がごく自然にそばにいた季節 異常気象は例年通り
074:刃 生きるのは汚れてくこと 二枚刃の間に詰まるヒゲとか何か
075:朱 ペンはある 朱肉もあるし旧姓の判子は買った あとは筆跡
076:ツリー 伊達眼鏡全身タイツリーゼントガニ股のヒーローの名前は?
077:狂 まだ君の夏の帽子は出っぱなし壁の時計は狂いっぱなし
078:卵 生々しい言葉は食中毒避けに温泉卵の半熟にする
079:雑 わたくしは父と母との雑種です 病気に強いのが取り柄です
080:結婚 夏空の向こうに羽根が「このひとと結婚するよ」見えた気がした
081:配 配線が乱雑ですね 赤いのが絡まってます 切れてませんか?
082:万 ハエ貴様!それは彼女の写真だぞ!その罪は万死に値する!
083:溝 負け犬の視点で歩く道の端 排水溝に草が生えてた
084:総 秋の陽が異常に赤く 涙腺が決壊します 総員退避
085:フルーツ 飾らずに食べなきゃ甘いフルーツであった以上は腐るのでしょう
086:貴 故郷を失くした人の目指す海 捩れの位置の貴種流離譚
087:閉 記憶庫は閉架式です 取り寄せは目録をご参照下さい
088:湧 仙人掌の中にだけ湧く水があり旅人に見て取れたのは 棘
089:成 眼を塞げ されば講和は成るだろう 満足か?明日の勇者ども
090:そもそも そもそもがブラひも如き見たせいで好きになったんではない はずだ
091:債 逃走は酸素負債の苦しさでほっときゃ治る程度のことで
092:念 残念なお知らせですが託宣は売り切れました 賽はあります
093:迫 旅立ちの時間が迫る 飛べなけりゃ雨天に絞首刑の執行
094:裂 うさちゃんの白い頭の裂け目から出てくるのまっ黒のが こわい
095:遠慮 まだちょっと遠慮したいんだとさって甘美が屋根で黄昏ていた
096:取 途切れたり掻き消されたりするからね 失った言葉を取り戻せ
097:毎 毎年のように汚れる外壁を君と二人で塗り替えたこと
098:味 僕たちの血の味のするキャンディーが僕たちのミライを破壊する
099:惑 われという惑星があり鉄塔を中心として回る ぐるぐる
100:完 いつの日か完成するよねと笑う 尊き愚者の解答として